サラリーマンが必ず経験する悩みの一つが部下育成。
部下を持つことになった人は誰でも
「言われたことしかできない」
「報・連・想ができていない」
「期限を守らない」
こんな経験をしたことがあるのではないでしょうか。
僕は日本人の若手や現地社員を部下に持つ駐在員ですが、他の駐在員からも似たような話をよく聞きます。
が、残念ながらその原因は上司やマネジメントなどの部下育成マインドに問題があることがほとんどです。
僕もシンガポールで部下の育成に相当な苦労をしてきましたが、あれこれ試行錯誤を繰り返してきた結果
部下が自主的に仕事に取り組む→新しいアイデアやお客さんを発掘する→部下の活動により会社の進めべき方向が見える
というような好循環を作ることができ、毎年着々とビジネスが成長しています。
本記事では
・これから部下を持つ方 ・現地社員を部下に持つ駐在員の方 ・部下の育成に悩んでいる方
向けにどのようなマインドで部下育成をしたらいいのか、僕の経験をもとに解説していきます。
部下育成の際に意識すること
部下育成の際に上司が意識すべきことは
- 育成における準備期間の設定
- 部下の心理的安全の確保
- 仕事の動機付け
の3点です。
当たり前のことのように思えますが、意外とできていない職場が多いです。
なぜこれらが重要なのか、その理由をひとつひとつみていきましょう。
部下育成における準備期間の設定
その部下を持つことは初めてという場合は、経験豊富な上司でも一定の準備期間(観察期間)が必要。というのが僕の考えです。
上司として配属された人は大抵
「有能な上司であるところを見せたい」
「マネジメント能力の有無を会社から見られているから頑張らなくちゃ💦」
このようなプレッシャーを抱え、部下を厳密に管理しようとします。
僕の会社でも「あれやれ」「これやれ」と最初から細かい指示を出す上司が多いこと。
多かれ少なかれ会社には上下関係があるので表面上、部下は従ってくれますが
『来たばかりで何も知らないクセにうるせえな』
『まずはこっちの話を聞いてくれよ』
というのがの本音かと。
いきなりのダメ出しはNG
特に部下の方がその職場で長く在籍している場合、いきなりの口出しはNGです。
これを象徴するエピソードがひとつあります。
定例の営業会議で赴任したばかりの現地法人社長が、現地スタッフが進めてきた商品の販売促進方法にいきなりダメ出しをしてしまいました。
部下がその理由を聞いても「いいから言われた通りにしろ!!」との一点張りの社長。
来たばかりの人にいきなり真っ向から否定された現地スタッフは泣き出してしまい、やる気を失っていました😅
慌てて現地スタッフの仕事内容をヒアリングしたところ、これまでの活動をもとにしっかりと裏付けされたものでした。
すぐに社長を説得し、現地スタッフのアイデアベースに進めることにしました。
これが功を奏し、商品の売り上げは年率10%のペースで成長しています。
急がば回れ
ビジネス自体はうまくいったものの、社長と現地スタッフの信頼関係が回復するまでには1年程度かかりました。
このように最初からいきなり熱の入った指導をすると、思わぬところでギクシャクしてしまうことがあります。
早る気持ちはわかりますが、グッと堪え、少なくとも3ヶ月は様子見の時間に使うことをオススメします。
準備期間中は報告書やccで入ってくるメールなどをよく読んでおくことが重要です。
たくさん来るccメールは読み飛ばしがちですが、しっかりと目を通し部下の業務内容を把握していきましょう。
徐々に部下の特性がわかり、必要なアドバイスができるようになっていきます。
心理的安全の確保
部下の特性をある程度把握できたら、次は心理的安全を確保してあげましょう。
これだけだとピンと来ないと思いますので、まず質問です。
あなたは誰に悩みを相談をしますか?
多くは家族や友人など心から信頼できる人にすると思います。
これは職場でも言えることで
『この人なら何を相談しても大丈夫だな』
と思ってもらえるかどうかが勝負です。
部下が信頼してくれるようになれば、こちらから何も言わなくても報・連・相が来ます。
会社の意思決定など、上司が仕事を進める上での判断材料は報・連・相からの情報です。
このように部下から適切な情報を吸い上げる必要があるのですが、そのための大事な一歩が部下にとって安心な職場環境を作り出すことです。
ではどうしたら部下の心理的安全を確保できるのでしょうか。
このときに上司が持つべきマインドセットは
・怒らない
・話を聞く
・褒める
の3つです。
怒らない
部下に仕事を任せる以上、事の大小にかかわらずミスは必ず起こります。
責任感の強い上司ほどプロ意識の高さゆえ、厳しく叱ってしまう傾向があります。
ミスを気づかせてあげたり、再発を防ぐことは上司の役割ですが、怒るのはやってはいけないことです。
誰でも自分のミスだとわかれば落ち込み、反省するものです。
ここでさらに怒る行為は、傷口に塩を塗るようなもので部下の心理的安全を揺るがすことになりかねません。
部下がミスをしてしまったときは一緒に原因究明と今後の対応を一緒に考えてあげるなど、自信を失わないような配慮が必要です。
上司がこのような姿勢で接していると、今後トラブルが起きたときに部下自身が冷静に対応できるようになっていきます。
手間はかかりますが、長期的に見ると怒らない方のメリットの方が断然大きいです。
それでもつい怒ってしまった場合は落ち着いたとき謝りましょう。
時には過ちを認めるのも必要なことです。
話を聞く
経験が少ない部下の提案に対し、頭ごなしに否定する上司は意外と多いです。
僕に言わせると、これも部下の心理的安全を阻害する要素のひとつです。
どんな部下でも『会社やチームに貢献したい』という想いは少なからずあります。
組織の最終的な意思決定権は上司にあるので結果は変わらないかもしれませんが、まずは一通り話を聞いてあげましょう。
思わぬ良い提案が出てくることもありますし、何より「自分の意見を言える場所」があることは部下本人が自分の存在価値を感じるきっかけになります。
忙しい上司にとっては面倒なプロセスなようにも見えますが、この姿勢は持っておくべきしょう。
褒める
きっちりした管理を好む日本人にとっては抜け漏れがあったり、忘れ物をしたり部下の悪いところ見がちです。
改善点を指摘することは悪いことではないですが、「良いところをとことん伸ばす」というアプローチもアリなんじゃないかと思います。
『自分はこれが得意だ』ということが見つかれば、それが心の拠り所となり自信がつきます。そして心に余裕ができたら改善点も自分で見つけるようになり、アドバイスも聞くようになります。
うちのスタッフを見るとそんな感じがします。
動機付けのために上司がすること
部下が安心して仕事に集中できるようになったら、あともう少しです。
最後は仕事に対する動機付けをしていきましょう。
やることは
- 自ら失敗する
- 仕事の意味づけを与える
の2つです。
これができるかどうかでリーダーたる上司の資質が問われます。
大切なポイントなのでじっくりみていきましょう。
リーダー自ら失敗せよ
仕事のモチベーションやチャレンジ精神を阻害する1番の要因は「失敗への恐怖」です。
失敗を経験すると
ミスを犯すのが怖くなる→新しいことにチャレンジしなくなる→無難な仕事しかしなくなる→仕事が単調になり興味を失う
という負の連鎖に陥ってしまいます。
そうならないよう上司自ら挑戦して失敗する姿を見せることで、失敗への恐怖を取り除いてあげる必要があります。
市場開発やプロジェクトの立案など新しいことを始めるときは、僕が撃沈するところを部下に見せるようにしています。
「失敗することで経験が積める」という意識付けをすることで、部下の仕事に対する姿勢が見違えるほど変わっていきます。
現在僕のチームでは、スタッフが思いついたことは3秒以内にやらせるようにしています😏
全部が全部、上手くいくことはありませんが、
- 自分で仕事を創る
- スピード感を持って進める
というマインドを持って仕事に取り組むようになりました。
仕事の意味付け
あなたが仕事を楽しいと思うときはどんなときでしょうか?
多くの場合
- 誰かの役に立っている
- 自分の成長を実感できる
こんなときだと思います。
普段から実務に忙殺されている部下は、ひとつひとつの仕事の意義に気付く機会がそうそうありません。
そこで上司であるあなたが定期面談などで仕事の意味付けをしてあげましょう。
僕には複数の部下がいますが、感謝会という形で毎月ひとりひとりと30分ほど面談する時間を設けています。
その際には以下の項目を箇条書きでまとめ、渡しています。
- 取り組んでくれた仕事への感謝
- プロセスや結果のフィードバック
- 今後のアドバイス
「あなたはこんなにも会社やお客さんに貢献しているんだよ」そんな想いで毎月書いています😌
部下育成に悩んだときにオススメの本
一口に部下と言っても勤勉だったり、のんびりしていたり人によって様々です。
部下育成にはコレといった最適解はありません。
「情熱をかけて指導してもなかなか上手く行かない」
そんなこともたくさんあります。
僕も部下に頑張って向き合おうとしてきましたが、
- 勝手に出張に行ってしまう
- 報告書が出てこない
- 資料の提出に遅れる
などなど思うようにマネジメントができず、ストレスを抱え神経性の胃炎になったことがありました。
上司に相談したこともありましたが、
「東南アジアの人はすぐやめるから命令だけしておけ」
と言われるだけで全く取り合ってもらえませんでした。
一筋縄ではいきませんが、何かの縁があって育成することになった部下。
いつか辞めてしまうとしても、会社にいる間はできる限り多くの愛情を注ぎたいものです。
上司からのアドバイスは参考にならなかったのでコーチングの本を読み、
良さそうな方法を試してみる→効果の検証→違う本を読んで試す→効果の検証
というサイクルを繰り返し、に気づいたら約20冊の関連書籍を読んでいました。
本記事の内容はこれらの文献と現場での実践がベースになっています。
読んだ本の中で実践に活かすことができた2冊を参考までに紹介したいと思います。
もしアドラーが上司だったら
これから部下を持つことになった人にぜひオススメしたい本です。
こんな上司がいてくれたら部下のモチベーションは上がっていくだろうなという理想のマネージャー像が描かれています。
僕はまだまだこの人には遠く及びませんが、部下へのコーチングで大変参考になった一冊です。
上司と部下それぞれが持つべきマインドセットがコンパクトにまとめられ、且つ物語形式で読みやすく書かれているので入門編としては最適です。
自分で動く若手営業の育て方
「自分で考え行動する部下を育てたい」
「組織をもっと活性化したい」
そんな上司の方に読んでいただきたい一冊です。
複数のすれ違い事例をもとに、今どきの若手に適した育成方法が解説されています。
営業マンがテーマになっていますが、目標設定や評価プロセスなど管理部門でも充分応用できる内容になっています。
少々ボリュームがありますが、より実践的に書かれているので育成の具体的なアプローチを学ぶのはもってこいの本です。
僕が毎月やっている定期面談はこの本に書かれている内容をヒントにしました。
それでも難しかったら・・・
上司が意識すべきことにフォーカスを当ててきましたが、これら全てをやっても必ず上手くいくとは限りません。
「精一杯やったけど結局辞めてしまった😢」
なんてことがあっても決して自分を責めないでください。
部下育成は馬を飼育するようなものです。
上司にできるのは、美味しい牧草があるところに馬を連れていくことまで。
どんなに牧草が美味しくても、最終的に食べるかどうかは馬次第。
常に良い牧草を探してあげる努力は必要ですが、食べる/食べないのは部下本人の問題です。
食べないでどっかに行ってしまってもあなたが気にする必要はありません。
現に僕の会社は若手社員の育成に力を入れている方ですが、それでも何人かは辞めていきます。
上述したことを精一杯やってダメなら、「相性が悪かった」と考えるしかありません。
この世の中、離職率がゼロという会社はないのでそれもしょうがないかなと。
まとめ 大変だけどやりがい充分な部下育成
個々人の特性の把握、安心して働ける環境の構築、動機付けなど部下育成は学ぶことが多く、決して楽な道のりではありません。
大変だなと感じることもしばしばありますが、その分やりがいも大きいです。
日々成長していく部下の姿は仕事のストレスを一気に吹き飛ばすほどのインパクトあります。
特に「この商売決まりました」など、喜んで報告してくる姿は自分が成果を上げたときより嬉しいものです。
上手くいかないことも多々ありますが、情熱を持って接していけば自然と想いが伝わっていくはずです。
部下を持つ方はたっぷりと愛情を注いであげてください😌
コメント
All subordinates are look for a reasonable, considerate, tolerant, supportive and good boss with good leadership. This is one of the motivation for them to keep their passion of work!